コラム

ニキビに効く漢方薬の選び方|症状別おすすめ処方と効果を専門医が解説

2026.04.07

皆様、こんにちは!林です。

ニキビ治療といえば、塗り薬や抗生剤を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、「何度も繰り返す」「抗生剤を飲み続けるのは不安」という声も少なくありません。そうした悩みに対して、漢方薬という選択肢がありますです。

漢方薬は、単に症状を抑えるだけでなく、体の内側から「ニキビができにくい肌」へと導く可能性を秘めています。今回はそんな「漢方薬」にフォーカスした内容をお届けします。

ニキビ治療における漢方薬の基礎知識

ニキビ治療における漢方薬の位置づけ

尋常性ざ瘡としてのニキビ

ニキビは医学的に「尋常性ざ瘡」と呼ばれ、毛穴の皮脂づまりと細菌増殖による慢性炎症性の皮膚疾患です。思春期から中高年まで幅広い世代で発生し、その原因は多岐にわたります。

一般的な治療法とその限界

一般的な治療では、ベピオやディフェリンなどの面皰治療薬、クリンダマイシンゲルやゼビアックスローションといった抗生剤が中心となります。抗生剤は急性期の炎症のあるニキビには切れ味の良い効果を示しますが、耐性菌の関係もあり長期間に使用できないという点に注意が必要です。面皰治療薬は継続使用していくことで、ニキビが出来にくい肌へと変化していき、さらにニキビ跡も改善していくというデータも得られています。しかしそれ以上に、、体質やホルモンバランスの乱れが根底にある場合、これら一般的な治療法だけでは限界があることも事実です。

漢方医学におけるニキビの考え方ー根本原因へのアプローチー

そこで注目されるのが漢方薬による治療です。漢方では、ニキビを「気(熱)」がこもって上に上がることが原因と捉えます。思春期ニキビは「気(熱)」が多すぎる状態、大人ニキビはストレスや不規則な生活によってホルモンバランスが乱れ、「気(熱)」のめぐりが悪くなり熱がこもった状態と考えられています。「気」の停滞は、漢方でいう「血」や「水(津液)」の循環不全を引き起こし、代謝の低下やデトックス機能の低下につながります。それぞれの「気」「血」「水」の不調に対する効果をもつ漢方薬を使用していき、体質そのものを整えることで、ニキビの根本原因にアプローチしていく治療法と言えます。

ニキビの症状別・体質別の漢方薬の選び方

ニキビ治療に用いられる漢方薬は、症状や体質によって使い分けることが重要です。

ここでは、代表的な4つの漢方薬について詳しく解説します。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):炎症性ニキビに

処方の特徴と由来

十味敗毒湯は、江戸時代の名医・華岡青洲が創案した処方で、化膿性皮膚疾患の治療薬として知られています。

10種類の生薬から構成され、「膿を外に出す作用」「炎症を抑える成分」「血行を良くする成分」が中心となっています。

主な生薬の働き

桔梗は化膿した膿を排出させる作用があり、柴胡は抗炎症作用で膿の形成を抑えます。川芎は血行を促進して瘀血(血の滞り)を改善し、茯苓は利尿作用により余分な水分を排出します。防風や荊芥は発汗を促し、皮膚表面の炎症を鎮める働きがあります。

臨床効果

実際の臨床研究では、従来治療で改善しなかったニキビ患者122例を対象に十味敗毒湯を投与したところ、79.5%の改善率が認められました。また、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖と、その菌が産生する皮脂分解酵素リパーゼを抑制することも報告されています。

適した体質・症状

男性で炎症が強くない赤ニキビが多数あるケースや、女性でもホルモン周期と無関係に安定して吹き出物が出るケースに適しています。

出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30803018/

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):赤ら顔の慢性ニキビに

処方の特徴とガイドライン上の位置づけ

清上防風湯は、「顔面など上部の炎症を清熱し、風邪を防ぐ」ことを目的とした処方です。

その名の通り、顔のニキビなど上半身の熱を冷まし、炎症を鎮めることを狙った処方で、尋常性ざ瘡のガイドラインでも「治療の選択肢として期待する」として記載されています。

主な生薬の働き

12種類の生薬から構成され、防風を中心に、連翹の抗菌・抗炎症作用、黄芩や黄連の強力な清熱作用が特徴です。白芷は腫れを引かせ痛みを和らげ、山梔子は顔面など上半身の熱を冷まします。

臨床効果

ニキビに対する908例の漢方薬使用例を解析した論文によると、清上防風湯単剤によるニキビの有効率は女性で74%、男性で70%という結果が示されています。

適した体質・症状

体力が比較的あって、赤ら顔で、発赤が強く化膿を伴うニキビができているような人に適した処方です。赤ニキビや黄ニキビの急性期や、皮脂分泌の多いニキビに有効です。

出典:ttps://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/2/67_123/_article/-char/ja/

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):しぶといニキビの体質改善に

処方の特徴とガイドライン上の位置づけ

荊芥連翹湯は、その名に生薬「荊芥」と「連翹」を含むように、皮膚の炎症を発散させ毒を取り除く漢方薬です。

尋常性ざ瘡のガイドラインでも「治療の選択肢として期待する」として記載されています。

主な生薬の働き

17種類もの生薬から構成され、黄芩・黄連・黄柏・山梔子といった「四黄」と呼ばれる強力な清熱薬の組み合わせが特徴です。連翹・荊芥・薄荷は体表から熱を散らし、当帰・芍薬・川芎・地黄は駆瘀血・補血の作用を持ちます。

体質改善のメカニズム

この処方は、ニキビでこもる熱を抑える成分(清熱剤)と血流の巡りをよくする成分(駆瘀血剤)が一緒に入っており、炎症を鎮めつつ体質から改善する狙いがあります。

臨床効果

2018年のランダム化比較試験では、通常治療に荊芥連翹湯を併用した群で、炎症性のニキビ数が有意に減少したことが報告されました。この試験では12週間で明確な効果が現れ、副作用も特に認められませんでした。また、908例の解析では、荊芥連翹湯単剤によるニキビの有効率は女性で86%、男性で78%という高い有効率を示しています。

適した体質・症状

ストレスや血行不良が絡むニキビに対して、有効なケースが多いとされています。慢性的にしぶといニキビを体質改善と一緒にゆっくり治したいという人に適した処方です。

出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30057596/

桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん):女性の顎ニキビに

処方の特徴と婦人科領域での使用

桂枝茯苓丸加薏苡仁は、「瘀血(おけつ)」を改善する代表処方である桂枝茯苓丸に、皮膚の湿毒を排出する生薬「薏苡仁(よくいにん、ハトムギ)」を加えたものです。

婦人科領域(生理不順や子宮筋腫など)によく用いられる処方で、ニキビ治療においても特に女性に効果的です。

主な生薬の働き

桂枝は血行を改善し体を温め、茯苓は利尿作用で余分な水分を排泄します。牡丹皮は血を冷ましつつ滞りを取り除き、桃仁は血行を促進し瘀血を散らします。芍薬は鎮痛・鎮痙作用があり、薏苡仁は古来よりイボや肌荒れに効くとされてきました。

臨床効果

難治性の女性ニキビ患者199例中、約53%がこの処方単独で治療されており、約76%に有効との成績が示されています。

適した体質・症状

女性の顎ニキビや繰り返す炎症のあるニキビの治療でよく使われます。また、「しみ」にも適応が通っている数少ない漢方薬なので、ニキビのあとの色素沈着が気になるという人にも適しています。

出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/2/67_123/_article/-char/ja/

漢方薬を選ぶ際の重要なポイント

体質・症状に合わせた処方選択

漢方薬は体質や症状に合わせて選ぶことが何より重要です。同じニキビでも、「赤く炎症している」「慢性的に繰り返す」「月経周期に伴って悪化する」など、状況によって適した処方は異なります。

継続期間と効果発現の目安

また、漢方薬は即効性を期待するものではありません。体質改善には時間がかかるため、通常は数週間から数か月の継続が必要です。ただし、十味敗毒湯のように比較的早く効果が現れる処方もあります。

通常治療との併用が理想的

重要なのは、漢方薬だけに頼るのではなく、通常の治療と併用することです。実際の臨床研究でも、通常治療に漢方薬を併用した群でより高い効果が得られたという報告があります。塗り薬で表面の炎症を抑えながら、漢方薬で体質を整えるという両面からのアプローチが理想的です。

生活習慣改善の重要性

また、生活習慣の改善も欠かせません。睡眠不足やストレス、食生活の乱れはニキビを悪化させる要因となります。漢方薬の効果を最大限に引き出すためにも、規則正しい生活を心がけることが肝要です。

漢方薬の副作用と注意点

「天然由来=安全」ではない

漢方薬は「天然由来だから安全」というイメージがありますが、副作用がないわけではありません。

甘草による偽アルドステロン症

最も注意が必要なのは、甘草(かんぞう)を含む処方です。甘草は多くの漢方薬に含まれており、抗炎症作用がありますが、長期間大量に摂取すると偽アルドステロン症という副作用を起こす可能性があります。これは血圧上昇やむくみ、低カリウム血症などを引き起こす状態です。

皮膚刺激反応のリスク

また、皮膚の刺激反応も報告されています。国内第III相試験では、エピデュオゲル群で12.7%、十味敗毒湯を含む漢方薬群でも一定の割合で皮膚刺激や接触性皮膚炎が認められました。

専門家への相談の必要性

漢方薬を服用する際は、自己判断せず、必ず医師または薬剤師に相談することが重要です。体質や既往歴、他の薬との飲み合わせなどを考慮して、適切な処方を選ぶ必要があります。

特に注意が必要なケース

特に妊娠中や授乳中の方、持病のある方は、必ず専門家に相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 漢方薬はどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?

体質改善を目的とする場合、通常は2~3か月の継続が推奨されます。ただし、十味敗毒湯のように比較的早く効果が現れる処方もあります。症状の改善が見られても、再発予防のためにしばらく継続することが望ましいです。

Q2. 漢方薬と塗り薬は併用できますか?

はい、併用可能です。むしろ、通常治療と漢方薬を併用することで、より高い効果が期待できます。臨床研究でも、通常治療に漢方薬を併用した群で良好な結果が得られています。

Q3. 市販の漢方薬と病院で処方される漢方薬に違いはありますか?

基本的な成分は同じですが、病院で処方される医療用漢方製剤は保険適用となり、費用負担が軽減されます。また、医師の診断により体質に合った処方を選べる点が大きな利点です。

Q4. 漢方薬に副作用はありますか?

天然由来ですが、副作用がないわけではありません。甘草を含む処方では偽アルドステロン症のリスクがあり、皮膚刺激反応が起こることもあります。必ず医師または薬剤師に相談して服用してください。

Q5. どの漢方薬が自分に合っているか分からない場合は?

漢方薬は体質や症状によって適した処方が異なります。自己判断せず、皮膚科や漢方専門医に相談することをおすすめします。当院でも漢方薬を用いたニキビ治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

ニキビ治療における漢方薬は、体質改善を通じて根本的なアプローチを可能にする選択肢です。

十味敗毒湯は炎症性ニキビに、清上防風湯は赤ら顔を伴う炎症性ニキビに、荊芥連翹湯はしぶといニキビの体質改善に、桂枝茯苓丸加薏苡仁は思春期以降の女性の大人ニキビに、それぞれ適しています。

ただし、漢方薬は万能ではありません。

通常の治療と併用し、生活習慣の改善も同時に行うことで、より高い効果が期待できます。また、体質や症状に合わせた適切な処方を選ぶためには、専門家への相談が不可欠です。

繰り返すニキビに悩んでいる方、抗生剤の長期使用に不安を感じている方は、漢方薬による治療も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

著者情報 

LIKKAスキンクリニック院長 林 瑠加

  • 日本形成外科学会認定 形成外科専門医、分野指導医
  • 日本創傷外科学会認定 創傷外科専門医
  • 日本美容外科学会(JSAPS)正会員
  • 日本抗加齢医学会認定 抗加齢医学専門医
  • 日本臨床毛髪学会 評議員
  • 医学博士