体質改善からの皮膚症状の改善ー漢方薬のちからー
皆様こんにちは!林です。
季節の変わり目の今日この頃、お肌の調子はいかがでしょうか。
当院には一般皮膚科の患者様も数多くいらっしゃいます。急にじんま疹が出てしまった方、慢性的に皮膚の痒みや湿疹があり、これまでも何度か外用薬を試したけれど治りきらない方、痛みを伴う皮疹である帯状疱疹を発症してしまい驚かれた方など。
いずれも頻度の高い皮膚疾患であります。
そもそも皮膚に湿疹などが出来る機序としては、皮膚がさまざまな刺激や接触を受け、そこに体質的な要因が加わることによって、皮膚に反応が起こるわけですが、はっきりとした原因は残念ながら突き止めれないことのほうが多く、原因は分からないけれど、とりあえずステロイド外用薬によって炎症を止めて、保湿をすることでバリアを整えて、かゆみが強ければ抗ヒスタミン薬を使用して、、という治療法を選択するのが一般的です。
そんな中、私はときどき漢方薬の力を借りさせて頂いております。
漢方では「皮膚は内臓の鏡」と考えられており、体質的な素因がベースにあるなかで、治療に際しまず皮膚の状態を見極めるようにします。よく皮膚を観察すると、かゆみの強いものや水気を含んだもの、腫れがあるものなど、症状は一様でないことがわかります。こうした症状の現れ方から、東洋医学の考え方では、皮膚のお悩みを次の6つのタイプに分けて治療をします。

- かゆみの強い症状: 「風邪(ふうじゃ)」「燥邪(そうじゃ)」「寒邪(かんじゃ)」による
- ジクジク型の症状: 「湿邪(しつじゃ)」「暑邪(しょじゃ)」による
- 発赤型の症状: 「熱邪(ねつじゃ)」「火邪(かじゃ)」による
- カサカサ型の症状: 1~3の症状が長く続いて慢性化してくると、体内の栄養物質「血(けつ)」が不足し、カサカサした症状へと変化していきます。患部が乾燥性であることから、栄養物質「血(けつ)」や潤い物質「津液:しんえき」の不足による皮膚症状と判断します。
上記のように大きくは分けられますが、実際はこれらの症状は重複的に表れることが大半です。そして、実際には漢方における“ものさし”である、「証(しょう)」と、「気・血・水(き・けつ・すい)」を用いた体質の見極めを行いながら、どの症状が強いかを判断して薬を使い分けることが大切になります。
例えばニキビでは、急性期では炎症を伴うことが多く、「熱邪」の勢いが強くなっていると考えますが、一方で過労や、体調不良、抗菌薬の長期投与などの影響で、生命エネルギーを意味する「気」や、血液や栄養を意味する「血(けつ)」が不足すると(「気血両虚」)、熱邪を排除することができないため、にきびがなかなか治らないという状態に至ります。また「血瘀(けつお)」という血流がうっ滞しやすい体質になると、暗い色や紫紅色のニキビができたり、ニキビ跡の色素沈着が残ったりしやすくなります。
各段階で対処法は異なり、「熱邪」に対しては熱を冷ます漢方薬(例:十味敗毒湯)、「気血両虚」に対しては気血を補う漢方薬(例:当帰芍薬散)、「血瘀」に対しては血行を促進し、うっ血を取り除く漢方薬(例:桂枝茯苓丸)が有効です。
特に女性の場合は月経周期に伴いニキビの悪化が起こるという訴えが非常に多く、これは月経前の黄体期に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加し、プロゲステロンによる皮脂分泌が促進し、毛穴の詰まりが起こりやすくなるためです。

月経不順に漢方薬が良く使われるのと同様、月経周期によるニキビの増悪に関しても漢方薬は良い適応であり、内側からホルモンバランスを整えてくれたり、血行不良を改善し、体に栄養をいきわたらせてくれたりするため、一般的なニキビに対する外用薬と併用することで、より根本的な改善につながる可能性があります。
知れば知るほど奥の深い漢方薬の世界。
是非皆様の日常にも漢方薬を取り入れてみてください☆