毛髪治療

毛髪治療

以前より男性の脱毛(AGA:主に男性ホルモンに依存する脱毛症)が多く取り上げられておりましたが、最近では女性でも薄毛を気にされる方が’一定数いらっしゃいます。原因は様々で、遺伝的背景やホルモンバランスの乱れ、生活習慣の乱れやストレスが毛周期を乱し、薄毛が引き起こされると考えられています。
毛髪に対するアプローチは日に日に進化しております。従来よりよく行われていた内服、外用寮法に加え、毛髪の再生を促すような成分を直接頭皮に注入していくことにより、より短期間に効果を実感して頂くことが可能となりました。

こんな悩みはありませんか

  • 髪の分け目が薄くなってきた
  • 髪の毛が細くハリやコシがなくなった気がする
  • 額の生え際が後退してきたような気がする
  • 地肌が目立ってきた
  • 頭頂部が薄くなってきた気がする
  • 薬を内服しているが効果がみられない
  • 育毛サロンに通ったが効果がない
  • 抜け毛が多くなってきた
  • 思春期から抜けはじめ薄毛が進行している

薄毛の原因ー毛周期についてー

髪のみならず全ての体毛はずっと伸び続けるわけではなく、成長しては抜け落ち、また同じ毛根からまた新しい毛が生えてくる、という毛周期と呼ばれるサイクルを繰り返します。毛周期は髪が伸びる「成長期」、成長が止まる「退行期」、脱毛の準備が進む「休止期」の3段階よりなり、通常3~8年で新しい毛に生え変わっていきます。何らかの原因で成長期が短縮し、太く長い毛に成長する前に退行期→成長期と移ってしまうと、結果的に軟毛化、薄毛となる可能性があります。遺伝的な素因に加え、食事、生活習慣、ストレス、病気や薬の副作用などの因子も影響していると考えられております。

毛周期

女性の薄毛の特徴

女性において発症する脱毛症を総称して、「FPHL: Female Pattern Hair Loss」と呼ばれます。この中に、びまん性脱毛症やFAGA(女性男性型脱毛症)、円形脱毛症、牽引性脱毛症、産後脱毛症などが含まれ、それぞれ治療が異なります。
男性型脱毛症と異なり、特定のホルモンが影響しているだけではないため、治療には各種治療を組み合わせていく必要があります。

女性の薄毛の種類

➀びまん性脱毛症

女性に起こる代表的な薄毛の1つが、びまん性脱毛症です。「びまん性」という名の通り、頭部全体に広がる脱毛症を指します。抜け毛が増える、髪の毛全体のボリュームが減ったように感じる、髪の毛のハリやコシがなくなる、分け目の部分が目立つようになる、髪の毛を通して地肌がぼんやりと透けて見えるようになる、といった訴えから疑われる状態です。
びまん性脱毛症が女性に多い理由は、発症にホルモンバランスや自律神経の乱れが深く関わっているからです。女性は妊娠や出産、月経など生涯にわたって何度もホルモンバランスが変化する時期を迎えます。女性ホルモンのエストロゲンは毛髪の成長を助けますが、加齢や出産によって分泌が減少すると成長期の毛が減り、抜け毛や細毛が増えます。また強いストレスや睡眠不足などもホルモン分泌を乱し、症状を悪化させる可能性があります。
びまん性脱毛症の原因としては、頭皮環境の悪化も挙げられます。植物が肥沃な土壌に育つように、髪の毛も良好な頭皮環境下で健全に成長すると言えます。過度なダイエットに伴う栄養不足、睡眠不足や睡眠の質の低下、誤ったヘアケアやカラーリング、シャンプー剤で頭皮環境が悪くなることも、びまん性脱毛症に繋がります。

②FAGA(女性男性型脱毛症)

AGA(男性型脱毛症)が男性に起こることは有名ですが、実は女性にも起こることが知られています。女性もわずかに男性ホルモンを持っており、女性ホルモンであるエストロゲンが薄毛を防いでいることが知られています。何かしらの原因で女性ホルモンが減ってしまうためと相対的に男性ホルモンが多くなり、薄毛になる事をFAGAと呼ばれています。
女性ホルモンの減少理由は加齢やストレス、生活習慣の悪化などですが一定量は分泌されるため、男性のように特定の箇所の脱毛が集中的に起こることは少なく、びまん性脱毛症と同様な脱毛の特徴となることもあります。

※びまん性脱毛症とFAGAの違い

びまん性脱毛症とFAGAは同義語として扱われることもありますが、医学的には異なる概念です(広義のびまん性脱毛症の中に、FAGAが含まれていることもあります)。
びまん性脱毛症は、頭全体の髪の毛が均一に薄くなる状態を示す「症状」であり、加齢やホルモンの乱れ、栄養不足、ストレスなど多彩な要因から生じます。
一方FAGAは、女性ホルモンの低下や相対的な男性ホルモン優位が関与し、前頭部や頭頂部を中心に進行性の薄毛が広がる「疾患」であります。
更年期以降の女性に見られるびまん性脱毛症の多くがFAGAに該当すると考えられるため、両者を同義に扱うことがありますが、厳密には「症状」と「疾患」である違いがあります。

③円形脱毛症

頭髪に一部または複数個所に円形に脱毛する疾患で、重度の症状になると、頭髪全体、眉毛やまつげなど身体全域に及ぶケースもあります。肉体的・精神的なストレスによって、自己免疫機能に異常が発生し、Tリンパ球と呼ばれる細胞が異物と毛根を誤認して毛根を攻撃してしまうことで発症すると言われています。
治療としては、ステロイド外用、ステロイド局注、局所免疫療法などが行われます。

④牽引性脱毛症

牽引(髪を引っ張る)ことで髪が抜ける症状です。例えばポニーテールなどで、長期間に渡り常に同じ箇所の毛髪や頭皮を牽引すると、毛根に負担がかかり脱毛が起こります。
治療としては、髪型や生活習慣の見直しを行います。

⑤産後脱毛症

出産後に発生する脱毛症のことです。出産後にホルモンバランスが変動することで、毛周期の成長期の毛髪が一気に休止期へ移行しまい、抜け毛が急激に増えてしまう症状です。女性ホルモンであるエストロゲンは、毛周期の成長期を伸ばして一時的に抜け毛を抑える作用があるため、妊娠中はエストロゲン量が増加することで、本来抜けるはずの髪の毛の成長期が伸びたことで抜け毛が減ります。しかし出産後は増加していた体内のエストロゲンが元の量に戻るので、妊娠時に一時的に止まっていた抜け毛が出産後に急激に進み、結果として髪が薄くなります。
出産後、半年から1年程度の時間をかけて元の毛周期の状態に戻るため、基本的には治療の必要性はありませんが、高齢出産や育児疲れ、ストレスが原因で産後の脱毛症が長引いてしまう方には治療が必要な場合があります。

男性の薄毛の特徴

男性の脱毛症はいわゆる「AGA(Androgenetic Alopecia)」と呼ばれ、は日本の男性の約3人に1人が発症する進行性の脱毛症です。男性ホルモンと遺伝的要素が主に発症に関与していると言われておりますが、それに生活習慣の乱れが加わることで、特に生え際や頭頂部を中心に薄毛や抜け毛が進行しやすくなります。
AGAの人は全国で1,260万人*、そのうち気にかけている人は800万人、何かしらのケアを行ったことのある人は650万人と言われております。AGAは進行性です。何もせずに放っておくと下のグラフのように髪の毛の数は減り続け、徐々に薄くなっていきます。早めのケアが大切です。
*20~69歳成人男性4200万人の約3人に1人

Kaufman K D et al. € J Dermatol 2002; 12(1): 38-49.より

薄毛・AGA(男性型脱毛症)の原因

毛周期には「成長期」「退行期」「休止期」がありますが、AGAでは成長期がどんどん短くなり、毛髪は太い毛に成長しないまま退行期、休止期に移行し、抜け落ちてしまいます。

AGAのヘアサイクルの図

こうした症状を引き起こす原因の1つが男性ホルモンです。毛髪の成長は毛根の「毛乳頭」と呼ばれる部分の指令によってコントロールされていますが、血液中の男性ホルモン「テストステロン」が毛乳頭に入ると、毛乳頭内の酵素(5αリダクターゼ)の働きで「ジヒドロテストステロン(DHT)」という強力な男性ホルモンに変換されます。このDHTは毛周期の成長期を半分以下に短縮してしまうことが分かっており、結果、毛周期の乱れで抜け毛が増加し、薄毛が進行するのが、AGAのメカニズムと考えられています。
ただし、男性ホルモンの量が多い人ほどAGAになりやすいわけでもなく、毛乳頭にある男性ホルモン受容体の感受性が高い人が発症しやすく、それには遺伝的な素因が関与していると考えられています。男性ホルモン受容体は前頭部や頭頂部に多く分布するため、AGAによる薄毛はこれらの範囲に起こりやすく、逆に後頭部や側頭部は受容体の分布が少ないため影響を受けにくいと言われております。

毛乳頭のホルモン受容体の図

薄毛・AGAの進行パターン

AGAの特徴は、その脱毛の進行パターンにあります(ハミルトン・ノーウッド分類)。
額の生え際から後退していくタイプ、頭頂部から薄くなるタイプ、これらの混合タイプなどさまざまな脱毛の進行パターンがあります。

男性と女性の脱毛症の違い

 男性(AGA)女性(びまん性脱毛症・FAGAなど)
主な症状生え際、頭頂部が局所的に薄くなる(M字型、O字型など)髪全体が細くなり、ボリュームがなくなる、分け目や頭頂部の頭皮が目立つ
進行パターン局所的な進行全体的なボリューム減少
発症年齢20代後半から30代から始まりやすい更年期に多いが、思春期以降いつでも起こりうる
典型的な原因男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の影響ホルモンバランスの乱れ、加齢、遺伝など複数の要因が複雑に関与
治療法の違い5α還元酵素阻害薬などの内服薬が中心ミノキシジル外用薬や、女性用内服薬が中心

毛髪治療の種類

女性と男性では毛髪治療の方法は大きく異なります。男性のAGAでは男性ホルモンの作用を抑制する内服薬が治療の基本となりますが、女性の脱毛症においては男性ホルモンが直接的な影響ではないことが一般的であり、女性ホルモンのバランスを整える薬剤や、ミノキシジルの外用が行われることが多いです。

男性の脱毛症の治療

内服療法:フィナステリド、デュタステリド

男性ホルモンの作用を抑制する内服薬が治療の基本です。プロペシア(フィナステリド)やザガーロ(デュタステリド)には薄毛・抜け毛の進行を止める作用があります。フィナステリドよりもザガーロのほうが、男性ホルモンをより強力に阻害するため効果がある反面、男性機能に対する影響も大きいとされています。効果を実感するためには数か月間は続けて内服する必要があり、半年以上の治療で有効率は80%近くと言われております。また後述するミノキシジルとの併用が可能です。

フィナステリド・デュタステリドの副作用・使用禁忌
副作用肝障害、性機能低下など ※治療開始前、内服治療中の採血を推奨しております。
治療が行えない方重篤な肝疾患、前立腺がん、妊活中の方、女性
  • フィナステリド・ザガーロ服用中は献血が行えません。行う場合は、フィナステリドの場合は最低1か月、ザガーロの場合は最低6か月の休薬が必要です。

外用療法:ミノキシジル

ミノキシジルには頭皮の血行促進効果や、髪の毛を作る毛母細胞の活性化などの効果があります。ミノキシジルの内服は心臓への影響が強く出ることがあるため、当院では外用療法のみでのお取り扱いとなります。

当院ではミノキシジル5%を配合したリゲインをご用意しております。頭皮に直接つけるフォームタイプで、髪が薄い部分への集中的ケアにもお使い頂けます。副作用として、アルコールが含まれているため、かぶれたり赤くなることがあります。

女性の脱毛症の治療

内服療法:パントガール、ルグゼバイブ、スピロノラクトン

男性ホルモンを抑える内服薬(フィナステリドやデュタステリド)は、女性への使用が原則認められていないため使用できません。より自然な成分を含んだ女性向けのサプリメントや、ホルモンバランスを整える薬が使用されることが多いです。また、男性ホルモン優位となるために発症するFAGAタイプのびまん性脱毛症には、男性ホルモンの作用を抑制する抗アンドロゲン効果を持つ、スピロノラクトンが使用されることもあります。

スピロノラクトンの副作用・使用禁忌
副作用低血圧、ふらつき、めまい、口喝、頻尿、乳房の痛み、生理不順など
治療が行えない方急性腎不全、抗カリウム血症、重篤な血管硬化、妊婦・授乳婦

外用療法:ミノキシジル

日本の皮膚科医が参照する「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、女性の薄毛治療におけるミノキシジル外用が、「推奨度A(行うよう強く吸勧める)」と強く推奨されており、その有効性は科学的にも高く評価されています。これは数多くの臨床研究によって、ミノキシジルが女性の髪の毛の数と太さを改善する効果を持つと証明されているためです。

女性の場合は男性よりも低い、1-2%の濃度から開始するのが一般的で、当院でも2%のリカキシジルをご用意しております。より高い効果を期待し、男性同様5%の濃度を使用することも可能ではありますが、皮膚症状の有無などをしっかりと確認する必要があります。

注入療法

女性、男性ともに、毛髪再生に有効な成分を配合した製剤を、頭皮に直接注入していくことで、毛根の毛乳頭細胞を再活性化させる方法を選択することも可能です。下記毛髪の再生医療に関しては、各詳細ページごご参照ください。

育毛ダーマペン

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