コラム

帯状疱疹ワクチンと心血管疾患との関係

2025.11.11

皆様、こんにちは!林です。

本日は帯状疱疹ワクチンについてのトピックスを取り上げてみたいと思います。

「帯状疱疹」について聞かれたことのある方、もしくは罹患されたことのある方は比較的沢山いらっしゃると思います。

それもそのはず、日本人では9割以上の方が水痘・帯状疱疹ウイルスを体内に保有しており、80歳までに約3人に1人の方が罹患すると言われております。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、数十年間にわたって人の免疫システム内に潜伏し、その後再び活性化して、帯状疱疹と呼ばれる痛みやチクチク感、痒みを伴う発疹を引き起こします。水痘への罹患経験がある人なら年齢を問わず帯状疱疹を発症する可能性がありますが、免疫力の低下しやすい50歳以上において、発症の頻度が上昇します。

そして厄介なのが、帯状疱疹による皮疹が鎮静化したあとも、ウイルスによって神経が深い損傷を受けることで、ピリピリとした痛みが残ることがあり、この状態は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれます。治療が遅くなった場合や高齢の方での発症であるほど起こりやすい傾向にあり、ひどいと痛みが数年間続くこともあります。

日本とほぼ同じ頻度で帯状疱疹の発症率を認めているアメリカにおいて、米疾病対策センター(CDC)は、50歳以上の成人に、帯状疱疹ワクチンの2回接種を推奨しております。帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症しますが、アメリカでも1980年以前に生まれた方の99%以上が水痘・帯状疱疹ウイルスに感染済みのため、ワクチン接種にあたり水痘罹患歴を確認する必要はないとのことです。

この帯状疱疹ワクチン、帯状疱疹自体の罹患率を下げたり、発症後の帯状疱疹後神経痛の程度を軽減させたりの効果はもちろんありますが、今回アメリカの感染症関連の学会において、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らにより、

「新たな研究において、帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。」

との発表がありました。


アメリカの医療システムから収集した、17万4,000人以上の成人の健康記録を分析し、帯状疱疹ワクチン接種者と、ワクチン非接種者の健康状態のアウトカムとを比較したところ、帯状疱疹ワクチンの接種により、以下の効果が得られる可能性が示されたとのことです。

・血流障害による認知症のリスクが50%低下
・血栓のリスクが27%低下
・心筋梗塞や脳卒中のリスクが25%低下
・死亡リスクが21%低下



 Dehghani氏は、「帯状疱疹は単なる発疹ではない。心臓や脳に深刻な問題を引き起こすリスクを高める可能性がある。われわれの研究結果は、帯状疱疹ワクチンが、特に心筋梗塞や脳卒中のリスクがすでに高い人において、それらのリスクを低下させる可能性があることを示している」とニュースリリースの中で述べています。

同グループはこれまでの研究でも、帯状疱疹への罹患が心臓や脳の合併症を引き起こす可能性のあることを指摘しており、今回の新たな知見は、帯状疱疹ワクチンが帯状疱疹そのものだけでなく、それらの合併症の予防にも役立つ可能性があることを示唆していると言えます。

単なる皮疹や痛みだけでなく、心血管疾患への影響もある帯状疱疹。

複数回罹患することも稀ではなく、侮れません。

日本では50歳以上の方は帯状疱疹ワクチンに対して、任意接種として自治体からの補助が受けられることが多いです。

皆様もぜひ、帯状疱疹の予防に目を向けてみてください!